2008年3月アーカイブ

cd_rca_spacy.jpg山下達郎 / SPACY (Remaster)

どういうワケか僕の周りには「日本人が作る音楽」を全否定する人が結構いまして、「日本人のロックなぞ存在しない」とか、「日本人にアーティストなんていない」とか(これは僕の母親なんですけれども)、そこまで強情で無い人でもJ-POPを一緒くたにしてとりあえず終わっていると宣言してみる人はとても多いと実感します。

そのような意見は個人の感想なので自由なのですが、やっぱりそれを断言するには相当な覚悟が必要だな、ということをこのアルバムを聞きながらふと思いました。

山下達郎といえば最近(2008/3/12発売)ずっと一緒さというシングルが出たのですがもちろん速攻で買いに行きました。CMでやっていたカップリング曲のAngel of the lightが目的だったのですが、シングルなのにこれがアルバム並の充実度なんですね。1年ぶりくらいに心の底から買ってよかったと思えるCDに出会えました。

現在では山下達郎氏は音楽性を独特の達郎カラーにまで昇華させ、老若男女に愛されるサウンドを生産していますが、彼の音楽にはソウルやファンクといった黒人音楽がベースにあり、1976~1978年頃の彼の音楽にはそれが色濃く現われ、凄まじく黒く、グルーヴィで、かつそれをポップにまで昇華しているという点でまさに傑作だらけです。

その絶頂期にあった頃に作られたのがこちら、セカンドアルバムのSPACYです。発売当時はアナログ盤だったので現在ではCDにリマスターされております。

このブログでオススメする曲はやはりA面最後のDANCERになるでしょう。村上"ポンタ"秀一の手による強烈なブレイクビーツで始まり、ディレイがかった山下達郎の独白的な叫びがオーバーダブされ、そこに細野晴臣の弾くベースが彩りを添えるのです。サビまでの展開とサビ後の構成の強弱と抜き差し、全てが鳥肌ものです。J-FUNKの代名詞として山下達郎が挙げられる理由が一瞬で分かってしまう素晴らしい曲です。

このアルバム全部が完成されたポップミュージックであり、さらに村上"ポンタ"秀一、松木恒秀、佐藤博、吉田美奈子、坂本龍一、細野晴臣という豪華すぎる音楽のエキスパート達が参加していることが分かったのなら、これこそが日本人のアイデンティティに満ちた日本人の音楽であると断言できると思われます。

チャーなど日本人のロックが盛り上がりを見せていた頃にこのアルバムを山下達郎が作り上げたことに当時の音楽への信念と情熱を感じることができます。

山下達郎の真っ黒ファンク曲はこのアルバムのDANCERやSOLID SLIDERのほか、Windy LadyやBomberなど数多くありますのでチェックです。(Bomberは初めて聞いたとき腰抜かしました)

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Eddie Hazel / Rest In P (Purple Hazel)

私は「ジミヘンだけ」の人とはあまり関わってはいけないと思いますが、「ジミヘンとエディ・ヘイゼル」を挙げる人であればどんどんお勧めの音楽を教えてもらったりCDを借りさせてもらったりするべきだと思います。

こちらは92年に逝去したファンカデリックの最重要ギタリストであるエディ・ヘイゼルの未発表曲集です。市場にはPurple Hazelで出回っているようですが、せっかく意味深ないいタイトルがついているのでこちらで紹介したいと思います(PはもちろんP-FUNK周りのPでしょう)。

FUNKをほざく上で必ず出てこなければならないのがジョージ・クリントン率いるP-FUNK軍団であり、パーラメントとエディが参加していたファンカデリックというユニットです。サイケ色が強いロックよりのファンクミュージックを展開した彼らのサウンドや、宇宙との繋がりを意識する思想はのちのテクノ・ミュージックの誕生とも関わりが非常に深く、音楽が好きであれば聞いておきたいところだと思われます。

エディ自身ジミ・ヘンドリックスの影響を多分に受けており(トラック3のサブタイトルPurple Hazelはジミヘンの名曲Purple HazeとEddie Hazelを組み合わせた造語)、サイケなギターサウンドを得意としますがサウンド自体は全く異なりFUNKを背負ってきたエディのほうはグルーヴに満ちており自然と体が揺さぶられます。

こちらのCDは未発表曲集ということになってますが、ファンクのインストCDでは個人的にこれ以上のものを知りません。CD前半のそこらじゅうに見られる独特の「ハズシ」や「ズッコケ」は美学と言ってもいい出来で、今まで触れたことの無い曲の構成に卒倒されます。さらに実感させられるのがエディのギターの実力、サイケなワウギターは、ファンクの時はリズムで弾き、時にぐっとためる。涙を誘うスローナンバーのときはまさに口でメロディを歌うように流れるように弾いてくれます。

CDの帯には「全身の細胞で聞け」なんてでかでかしく書いており、ビクター広報の熱いスピリッツを感じることができます。個人的にはよく言う「墓場に持って行きたい」系の感慨深い一枚です。(Amazonのリンクを見たら47934円でさすがに笑いました)エディ・ヘイゼルを深く知りたいのであればファンカデリック作品を聞くのが一番早いと思われます。

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Michael Jackson / Dangerous

2008年2月28日、マイケルジャクソンの家「ネバーランド」が3月に差し押さえられてしまうかもしれないというニュースが入ってきました。ちょうど最近スリラー 25周年記念リミテッド・エディションなんてものを発売してアーティストとして見直されるチャンスでしたが一ヶ月も経たないうちにゴシップキングに逆戻りとなってしまいました。

普通なら今回時期的にはスリラー25周年のほうを書くのが普通なのですが、マイケルのCDにファーギーやらカニエウエストなんてクレジットが並ぶだけで吐き気を覚えるマイケルのファンは結構いるわけで、僕もその一人であり買ったのですが「お勧めできるCD」ではなかったので当然ここには書けません。また考えようによってはネバーランドを象徴するような絢爛なジャケットやアルバムタイトルなどこちらのほうが時期的かもしれません。

こちらのDangerousはマイケルジャクソンの音楽がクラブ・ミュージックへ大きくシフトしたことを象徴するアルバムで、過去の作品とバッサリ線引きをしたようにサウンドワークの圧倒的な進化が見られます。当時名の知れたエンジニアを掻き集めて作られたこのモンスターアルバムのサウンドは不気味なくらい音のヌケが良く、どんな安いスピーカーで聞いてもキレイに聞こえるのです。

一曲目「Jam」の頭で入るガラスの破裂音にはこのCDの完璧かつ積極的なエンジニアリングが集約されており、このアルバムがいかにとんでもないものか簡単に想像させられてしまいます。その他にもドラム周り全般の音圧、また「Black or white」の冒頭のドアのノック音などおそらく1991年当時の技術力をこの一枚に集めたと言っていいのではないかと思います。特にJamやIn the closetのサウンドメイクや緻密に組み込まれたブレイクビーツは圧巻で、またトラッカーやエンジニア志望の方は確実に必聴であると断言できます。

前作「Bad」まではクインシー・ジョーンズのプロデュースであり、「Thriller」の一作前にあたる「Off the Wall」も担当しています(「Off The Wall」は人類史に残る名盤なので改めて書きたいと思います)。マイケルと組んで名盤しか生み出さなかったクインシー・ジョーンズのタッグを解消したことは個人的に残念に思いますが、このアルバムで共同プロデューサーとなったテディ・ライリーがマイケルと目指した音というのは正解だったと思いますし、クラブ・ミュージックが一般的に認知されている現在このサウンドワークは時代の先を読んでいたということもできると思います。

マイケルジャクソンは音楽、映像ともに常にテクノロジーの最先端にありました。というワケで80年以降の音楽と映像の技術革新を堪能したいのであれば、マイケルジャクソンのCDを聞いて、PV集を見るだけでいいのです。このブログをご覧の方にはビートルズよりマイケルジャクソンを薦める人になって欲しいと思って止みません。