2008年5月アーカイブ

Speak_Like_A_Child.jpgHerbie Hancock / Speak Like a Child

ハービー・ハンコックは今年(2008年)で68歳になったそうです。もうすぐ70歳になるにも関わらず今年の第50回グラミー賞で2007年発表の新作River: The Joni Lettersがアッサリと最優秀アルバムを受賞してしまうあたり、この人はもしかすると1世紀まるまる音楽の最前線に居続けるんじゃないかと考えさせられてしまうのです。

「ハービー・ハンコックは何人かいるんじゃないか」というのは僕がジャズを聞き始めた頃常々思っていたことでした。というのも僕はもともとクラブミュージックから入った人間で、僕の中でのハービー・ハンコックというのはGrandmixer DSTのジュキジュキスクラッチとブレイクビーツ、そしてロボットの足が不気味に動き回るPVでおなじみの「Rock it!」の人だったわけです。

そんなハービー・ハンコックを「ヒップホップの人」だと思っていた僕がこのアルバムを聞いたら当然嘘だとしか思えないワケです。こんな繊細でトロけてしまいそうな音の中のどこにハービー・ハンコックがいるんだという話です。こんな戸惑いも今となっては懐かしい限りですが、若い人間が名盤と言われた昔の作品にたくさん触れるということでこのような新しい発見に出会えるということはなかなかお得な体験では無いかと感じます。

僕がジャズを聞き始めた頃は完璧なジャケ買いでしたが、今思ってみてもジャズというのはもっともジャケ買いの成功確率が高いジャンルだと感じます。特にこちらの作品はハンコック作品の中でも最もアートワークとの親和性が高く、まさに僕にとって期待していた音でした。

「子供のように」というタイトルのとおりこの作品は全編が繊細なタッチで構成されているものの、ハービー・ハンコックのピアノ演奏から子供のような純粋さや好奇心が滲み出しており、それらが絶妙な塩梅で混ぜ合わされています。その結果、上品で高級感がありかつ純粋さを併せ持つというブラック・ミュージックとしてのジャズから実にさりげなく跳躍した名盤です。

個人的にこの一枚はハービー・ハンコックの人間性やセンスを一番感じることが出来るのではないかと思っています。この作品のベースになっている「美しさ」と「好奇心」は彼の音楽の全てに共通しており、ジャズファン達から大いに非難されたのちの問題作Head Huntersには、彼の好奇心がたっぷり詰まっており高速ブレイクビーツが思う存分楽しめるクラブミュージックファンにもオススメできる第名盤なので推しておきます